【タイタニック#1】T字シーンを支えるものは何か【三幕構成】

3年演劇に役立つシリーズ#5

今回から3回、「タイタニック」(1997)やります。新年度、このサイトを初めて見る人用おすすめ兼、リピータのための連載脚本解説兼、英語版本格初導入兼、3年演劇に役立つシリーズという、包含しまくった無茶な企画。

最近は意外と、見たことない人も多いタイタニック。そして今回の裏テーマは三幕構成。三幕構成を考える上では、非常にベーシックかつ練り込まれた作品。船が沈むだけじゃない、「愛の物語」とは何なのか。

3年演劇の皆さんは、葛藤や価値軸、三幕構成といった脚本術の確認・演習として使ってください。

 

脚本はジェームズ・キャメロンVFXでありがちな監督と脚本を兼任しているパターンだが、この人は脚本も上手かった。だからこれだけ世界中でヒットしたのは周知の通り。

三幕構成とは

ざっくりと、三幕構成が何かは説明しておこう。自分もかなり使っている。(Save the Cat に代表される、"絶対的三幕構成"でやる)。

まず、全体の尺を4等分する(三幕なのに)。2時間なら30,60,90分、1時間なら15,30,45分となる。1つ目が1幕、2つ目と3つ目が2幕、4つ目が3幕となる。

でなぜ4つに分けるか、それは切れ目に大きな意味があるからだ。1/4が第一ターニングポイント=1TP、1/2がミッドポイント=MP、3/4が第二ターニングポイント=2TPと呼ばれる。三幕構成で分析する時は、このTPを探すことが基本となる。

各ポイントでは、大きな価値軸が+/ーまたはー/+に振れる。そして、TPを超えると障害が増えて葛藤が加速する。

まあ細かい話はもっとあるのだが、本題ではないのでこの辺にしておく。

▽詳しい話はこちら

▽葛藤とは何か(こちらも読んでからを推奨します)

ファーストシーン

タイタニック」の出だしは、現在で潜水艦が沈没したタイタニックを探検するところだ。これはどうやら本物のタイタニックの映像らしく、価値はある。しかし構成からすると冗長で、ないほうが考える上でバランスも良くなるので、一度無視する。

このゾーンで大事なのはトレジャーハンタであるブロックが、船内に眠る宝石を見つけ金儲けすることを究極目標にしていること。そして、歳をとったローズがニュースを聞いて駆けつけ、その回想として全体が構築されることだ。

1幕、スタート

ヨーロッパからアメリカに出航する豪華客船・タイタニック。ローズは家の政略結婚のため、好きでもない結婚相手とアメリカに渡り、ー状態である。一方ジャックはたまたまトランプで勝ち、船のチケットを奪い、下級客室に滑り込む。アメリカン・ドリームを狙っているが、むしろ当てのない放浪という意味合いが強く、アークは0である。2人で対照的なものを持っていると考えると良い。

物語全体としてはローズが主人公でジャックがバディ、ローズが変わってジャックが変えさせる。不均衡な関係と読むのが一番すっきりする。

で、景気良くタイタニックは出航。全体は+に傾く。

その後、ローズはブルジョアの付き合いが嫌になって、結婚相手(キャル)に悪態をつき、1人甲板に出る。偶然ジャックはそれを一方的に見て、彼女に関心を持つ。男が自身に興味を持たない女を面白がってちょっかいをかけるうち、自身が引き込まれるというのは、古典的なオペラとかでもある構造。この出会いが、ジャックの均衡を崩す契機事件になる。この後、ローズに近づき口説くことがジャックの究極目標になる。

ここではメインが階級という社会的障害、次いでジャックとローズの個人的障害に置かれている。

1TP

社交ダンスというモチーフで、ーに再び増幅されたローズ。彼女は船から飛び降りて死ぬことを試み、1人夜に船の端に衝動的に出る。息苦しい社会から逃れるという究極目標に、飛び降りる恐怖という内的障害がぶつかる。

偶然それを見つけたジャックは、ローズを止める。ローズはガチで死ぬから近づくなと言う。ジャックは自身の経験を話すことで、落ちる恐怖を伝え、ローズを落ち着かせる。

ローズはそれを受け入れ、柵のこちらへ戻る。(一応、落ちる時に手間取らせて、落ちるんじゃねと物理的葛藤を煽っている)。

ここが1TPである。ジャックとローズが互いを ・認知/不認知 という大きな軸を、ー/+へ。ローズの究極目標は死ぬことから、ジャックが現れることによって変化する。ジャックの究極目標は継続し、目標に一歩近づく。

2幕へ

かといって、すぐに2人が接近するわけではない。TPの後すぐにーに戻る。そこには社会的障害がやはりある。それが2幕の前半。

キャルがブチギレて、ジャックを捕まえる。ローズが弁明して離されるが。キャルはローズに宝石を渡す。ローズは、キャルを選び運命に従うか、ジャックを選ぶかという問題にぶつかる。究極目標としては後者だが、社会的障害と「それはどうせ無理だろ」という先入観、諦め、内的障害がジャマしている。言い換えれば、今までの自分の生き方以外を知らない、としても良い。

ジャックとローズは昼間会うが、彼女が彼のことをぶしつけといい、距離は微妙に縮まらない。ここでジャックが絵を描いている伏線が入る。

その後夕になり、少し進展する。ローズが高貴じゃない生き方をしたいとこぼし、ジャックが唾の吐き方を教えるが、そこにローズの母たちが来てしまう。邪魔されるが、成金で彼女の母に嫌われているマーガレットが服を貸し、彼は夕食に顔を出す。

その後、2人はアイルランド式のパーティへ。踊り明かす。価値軸は+へ。

しかし、翌朝ローズの婚約相手、そして母と2人きりのシーンで強く釘を刺される。母を裏切る個人的葛藤。そしてジャックはローズを強引に機関室へ。彼は彼女に真意を尋ねる。彼女は結婚すると主張するが、彼は「本当の彼女」(=まさしく内的葛藤を揺さぶっていることがお分かりで)と、逃げ出すことを説得する。結局彼女は彼の前から去る。強くーーへ。

MP(T字シーン)

そして、みなさんお馴染みのあのシーンへ。手をT字状に広げるあれ。

ジャックが一人、ーで黄昏ていると、ローズがやってくる。「考え直したの」と。彼は端に誘導し、彼女は「空を飛んでるみたい」と。で初めてキスをする。

ここが折り返し、MPだ。ここの意味、サブテクストを考えてみよう。

ローズ目線からすれば、社会的障害を究極目標、意思が打ち破った。やはり一緒にいたい。そして、上流社会の運命に従う選択肢を蹴り、母を捨ててまで選んだことになる。それはやはり愛の力だろう。究極目標が達成されることで、価値軸は強く++へ。前半を通じて、ローズの不満/充足がー/+に変化したこととなる。

一方ジャックは、ローズを愛するという究極目標が、彼女の承認によって達成される。彼女に断られたシーンからすれば、価値軸はー/+へ。2人の社会的断絶/交流がー/+。

最初偶然だったのが、2人の悩みを経て、決断することで、究極目標が「一緒に生きること」に変質する。MPを通過することでこの後ストーリのペースは断然速くなり、社会を裏切ったことで障害も断然大きくなる。2人でどうやって生きるのかと。そこに、船が沈み出して物理的葛藤も加わる。

ここ、実は尺としては3分ほどしかないのだが、これだけ有名なのは、やはり上記したサブテクストによる力だろう。

まだ一ミリも沈み始めてないのに、普通に面白いでしょう? やはり葛藤をきちんとやるということは大切なわけだ。

キリがいいので、この辺にしておこう。次回は佳境、タイタニックが氷山にぶつかり、浸水を始めるところを扱う。乞うご期待。

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